ホタテ貝に雌雄はある?オオシャコガイは?ダイバー視点で見る性転換する貝とアニラオの海

ホタテ貝は雌雄同体?

先日北海道に行ったとき、ホタテ貝を食べる機会がありました。

奥さんの誕生日で訪れた、釧路のフレンチろばた焼きのコース料理を提供する炉端とワインK

炉端焼き自体、釧路が発祥だそうです。釧路の新鮮な魚介をメインに、様々なワインとマリアージュさせて提供してくれる素晴らしいお店でした。釧路に行ったら絶対リピートの、幸せな時間だったのですが、そこの食事の一幕で登場してきたのがホタテ貝でした。

これまでホタテにそこまで注目してこなかったのですが、5個出てきたうちの1つだけ、生殖器にあたる部分がピンク色で、ほかは白。  

直感的に「ピンクがメスで、白がオスかな?」と思ったのですが、雌雄について深く考えたことがなかったので、少し調べてみました。

同じ貝類に属する、貝殻を巻き貝から進化して貝殻を失った、ダイバーにおなじみのウミウシなどは、雌雄同体だったりするので、その辺も含めて興味がありました。

面白いことが分かったので、ここでご紹介します。

ホタテ貝にはオスとメスがある

ホタテ貝には雌雄があります。ウミウシのように、一つの個体が同時にオスとメスの機能を持つ、いわゆる雌雄同体ではありません。

食用のホタテを開いたときに見える

・白っぽい部分  

・オレンジ色から赤っぽい部分  

この色の違いは、生殖腺の違いです。

白い方は精巣、つまりオス。オレンジ色の方は卵巣、つまりメスです。

見た目ではっきり分かれるので、雌雄の見分けがつけやすい貝でもあります(殻を開ける必要がありますけど)。

実は性転換するホタテ

ホタテ貝が面白いのは、雌雄が固定されていない点です。

成長に伴って「オスからメスへ性転換する個体がいる」ことが知られています。

一般的な傾向としては、

・若く小型の個体はオスが多い  

・成長して大型化するとメスが増える  

という分布が見られます。

ただし、何歳になったら必ず変わる、という単純な話ではありません。  

体サイズや栄養状態、海の環境条件が整ったときに、繁殖の役割を切り替えると考えられています。

なぜオスからメスに変わるのか

この性転換は、とても合理的です。

精子は小さく、作るコストが低く、大量生産できます。  

一方、卵は大きく、栄養を蓄える必要があり、非常にエネルギーを使います。

つまり、

・体が小さいうちは、まずオスとして繁殖に参加  

・十分に成長してから、卵を作れるメスになる  

という流れは、無駄のない生存戦略なのです。ダイバーにおなじみの魚でいうと、ニモことカクレクマノミがこのパターンですね。イソギンチャクの家で最も大きくて威厳のあるのが「お母さん」です。

そしてメモ要件としては、「一度メスになったホタテが、再びオスに戻ることはほとんどない」という点。

ホタテの性転換は、基本的に一方向。オスからメスへ、です。

ホタテは「海の調子」を映す存在

卵巣が大きく、色づきの良いホタテが多い年は、その海域の栄養状態が良いことを示している場合が多いです。

・植物プランクトンが豊富  

・水温や環境条件が安定  

・個体がしっかり成長できた  

こうした条件がそろわないと、メスとして卵を作ることはできません。

ホタテの雌雄比や卵巣の発達は、その年の海のコンディションを密かに教えてくれる指標でもあります。

オオシャコガイは雌雄同体

では、同じ二枚貝でも、フィリピン・アニラオの海で出会うオオシャコガイはどうでしょうか。

アニラオでも見られるオオシャコガイは、ホタテとはまったく異なる雌雄の仕組みを持っています。

オオシャコガイは雌雄同体です。ただし、同時にオスとメスとして機能するわけではありません。

オオシャコガイは、

・まずオスとして精子を放出  

・その後、時間をずらして卵を放出  

という順序で繁殖します。

一匹の中にオスとメスの機能を持っていますが、放精と放卵は同時には行いません。これは自家受精を避けるためです。

ほとんど動かず、巨大で、個体間の距離が離れがちなオオシャコガイにとって、確実に他個体と受精するための、洗練された戦略と言えます。

ちなみに、多くのサンゴとは違って、オオシャコガイの産卵時期は昼頃だそうです。

オオシャコガイの外套膜(殻のすぐ内側にある、分厚い青い唇みたいなやつね)には共生藻がいて、光合成によって多くのエネルギーを生み出しています。

このエネルギーがあるからこそ、

・二枚貝としては最大級のサイズになる(最大230キロ!)  

・大量の精子を放出し  

・高コストな卵も作る  

という繁殖が可能になります。

ダイバーだからこそ見えてくる違い

日本のスーパーでもおなじみのホタテと、南国の海で出会うオオシャコガイ。同じ二枚貝でも、

・寒冷な海で育ち、成長に応じて性を切り替えるホタテ  

・南国アニラオの光の海で、共生藻とともに巨大化し、雌雄同体として生きるシャコガイ  

その違いは、潜る海の違いそのものです。

ダイビングは「見る」遊びでもありますが、同時に、その海の背景を想像する時間でもあります。

まとめ

・ホタテ貝には雌雄があり、成長に伴ってオスからメスへ性転換する  

・その性転換は基本的に一方向で、戻ることはない  

・オオシャコガイは雌雄同体だが、放精と放卵を時間差で行う  

・どちらも環境に最適化された合理的な繁殖戦略を持つ  

次にアニラオでオオシャコガイを見たとき。  

そして日本でホタテを食べたとき。

その裏にある、生きものとしての静かだが試行錯誤された戦略を、少しだけ思い出してもらえたら嬉しいです。

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