「固有種が見たい」とリクエストを受けることが稀にありますが、隣がマレーシア、黒潮で日本とも連結しているフィリピンにしかいないという生物はいないといってもよいと思います。
ただ、世界で最もサンゴの種類の多い三角地帯の北部に位置するフィリピンのアニラオ。他では観察するのに深い場所にいかないと見られなかったりするものが、比較的浅い水深でゆっくり見られる良さがあるようです。
多種多様な生き物のうち、アニラオを訪ねられる、世界各地を旅してこられたベテランダイバーさんに特に喜ばれる子たちを紹介します。
ヘアリーフロッグフィッシュ
日本でも大瀬崎などでたまに出るようですが、秋冬春の定番カエルアンコウです。若い個体ほど赤みが濃いです。黒くて皮弁の太い通称ドレッドヘアリーは1年に1回程度のレア。「フェアリー」と脳内変換されているメルヘンさんがたまにいらっしゃいますが、妖精さんは一般的にモジャモジャしていません。ヘアリー=毛モジャです。
オセレイテッドフロッグフィッシュ
レンベカエルアンコウとも言うようですが、レンベでなくてもアニラオでも見られます。季節は、冬と春。
ツノカサゴ
秋冬春の砂地のレギュラーメンバー。
ピグミーシーホース
ひねりのない普通のバージバンティで、色は紫灰か黄色。前者は水深14メートルから見られて、身体に優しいです。
ルソンハナダイ
マレーシアにもいるようですが、学名にもアニラオのあるルソン島がついている、ご当地ハナダイ。深いイメージのあるハナダイですが、20メートル付近から見られるポイントあり。
フトモイハナダイ
砂地やがれ場に生息する、日本にいないことだけが取り柄?の、少し地味な子。ギリギリ40メートルなので、メンバーを選抜して見に行く子です。
アンギュラーフェアリーラス
セブでは見られないのだそう。クジャクベラと仲良しでよく混泳していて、たまにハイブリッドもあらわれます。写真撮影にはエイム力が必要です。
スレンダーパイプフィッシュ
もしかするとガイドが指さないほどの、アニラオ普通種。ただ、他の国やエリアではほとんど見られないのだそう。受け口と大槻ケンヂっぽい目の下の線がトレードマーク。
チンヨウジ
ヨウジウオ系では最近アニラオで発見された、もともとはフィリピンミンダナオ島のダバオで標本採取されたっぽい子。サンゴの隙間に挟まっていて撮影はしにくいです。
ニシキフウライウオ
黒色が一番多い中で、写真に映える白い個体も結構出ます。白黒一緒にいたら、是非おさえたいレアシーン?
カンムリニセスズメ
暗がりを覗けば大抵いる普通種ですが、同じフィリピンでもセブ方面にはいないのだそう。あちらにいるのはクレナイニセスズメ。2色の分、こちらのほうがお得?にしても、「ニセ」スズメと名前で損しています。
スパイニークロミス
ほぼすべてのポイントにいるといっても良いスズメダイ。しかし侮るなかれ、子どもが大きくなるまで親が面倒を見る唯一のスズメダイです。一年中繁殖期なので、子どもたちの成長段階が比較して観察できるのもたい焼きマニア向け。小さいステージの幼魚には、親が身体から染み出す白い分泌物を食べさせるのだとか、しないのだとか。
コンビクトブレーニー(成魚)
ゴンズイかと見間違える幼魚が出入りしている巣穴の前でじっと待っていると、砂を吐き出しに現れるお父さんとお母さん。外でプランクトンを捕食してきた子どもたちの身体から滲み出る分泌物を舐って生きている逆すねかじり。
ピョコタン
正式名称であるアゴヒゲオコゼにたどり着く前の仮称が可愛くて、国境を超えて定着気味。その活躍、名付け親としては嬉しいです。
リボンリーフゴビー
一部の人にフェラーリと呼ばれている、ベンケイハゼの仲間。赤に白縞がキュートなのに、更に背びれに白い棘までついているサービスっぷり。しかし、ちっこい。
ミジンベニハゼ
日本だと、圧倒的に瓶の中の印象ですが、アニラオだと瓶以外に、ケヤリ、貝の殻、流木の穴など、多彩な家で見つかります。卵も外側に生むことが多々あり、観察しやすいです。ちなみにハッチアウトは早朝です。水深も10メートルからと、身体に易しめ。
ケラトソマ・アレナイ
掴みどころの取っ手満載な、ピンクのウミウシ。毎年同じエリアに現れるので、シーズンに入ればハズレは少ない高パフォーマンス。この写真で第3回アニラオフォトコンの商品いただきました。
ドトSP
最近の冬場の砂地を彩る色とりどりのブドウちゃん。
ラドマンミノウミウシ
ウミアザミに擬態する見事さにダイバーとしては驚嘆しつつも、ノンダイバーにわかりやすく、かつ写真として芸術性の高い撮影のするのが難しい、ミノ系のあいつ。学名をラドマン、ルドマン、ラッドマンとどう読むかは好みの問題な気も。学名ベースじゃなくて、ウミアザミミノウミウシ的な、わかりやすい和名にしてもらいたかったです。
バタンガスコンペイトウウミウシ(仮称)
なんだ、コンペイトウウミウシ、ですが、学名にアニラオのあるバタンガス州が入っているので、おみやげにどうぞ。
黄色いナマコ
ウミウシくらいの可愛いサイズの黄色いのは、ナマコです。キルビスロックなど潮通しの良い岩礁エリアに岩が一面黄色くなるほどの群棲するのは、通には一見の価値ありとか。
ミミックオクトパス
一斉を風靡した、擬態するタコ。アニラオのはたいして芸をしないので、期待しすぎないでください。
ワンダーバス
ミミックよりは個体数の少ないこちら。なぜかブラックウォーターで幼体がよく出現します。大人でほぼ見分けがつかないミミックとワンダー、何で幼体だけワンダーだと断定できるのか、根拠不明です。峯水さん、助けてください。
ミナミハナイカ
ミナミとつけるのが通らしいですが、当地では一種類しかいませんので、ハナイカで通っています。捕食するときにTIM的「命」字になるのが、キュート。
ヨーヨーシジミ
白っぽくて地味で写真バエしませんが、日本でこの種は激レアだそう。トラフジャコなど大型のシャコの巣穴で天蓋付きのものに共生していることがあります。
コールマンシュリンプ
条件が良いとと5メートルから見られる、浅さの有難みがアピール点のポルカドッツ。ホストのイイジマフクロウニも日本産よりカラフルなのがグー。シーズンに一人は強毒のウニに刺される人がいますので、寄る際の手元はもちろん、足元にも要注意。
アロポントニア・ブロックイ
コールマンを探すついでに、ウニのエッジも探しましょう。昔はイアイニといったのですが、いつの間にか学名チェンジしたのは、占い師に改名するよういわれたから、ではない。
オリビアシュリンプ
なんでも他国ではものすごく珍しいのだそう(その割に日本で出版されたエビ・カニ図鑑に載っている)。複数の生息穴があるので、機嫌が良ければ出会える、誰がどう見ても、アメリカ合衆国代表って意味では、ミス・アメリカ(←バトルフィーバー世代じゃないですけど)とお呼びなさい。
フィコカリス・シムランス
おそらく、歴代累計ダイバーの間で最も口に上ったラテン語じゃないですかね。数種入り乱れているとの説もあり。「大人の目」が身についてくると、ますます見えにくいゴミのようなあれです。
ワレカラ
アニラオのガイド人がもれなく好いていて指しがちな被写体。ダイバーによって好みが分かれるのはわかります。英語でスケルトンシュリンプ。図書室に置いてあるワレカラの絵本はキモカワです。