台風12号が抜けた火曜日のアニラオ
火曜日のアニラオです。台風12号を抜けて、天気は良い感じになりました。うねりは少し残っていますが、午前中は潮位が高いこともあって、ボートの乗り降りは問題ありませんでした。

スマートでSIMカードをeSIMに変更
マニラでの用事は、久々にスマートへ行くことでした。スマートは日本で言えばNTTドコモのような立ち位置の通信会社です。家から歩いて3分くらいのところにビルがあるので、アクセスは申し分ありません。昔は非常に並ぶところでしたが、今は基本的にオンラインでいろいろな手続きができるようになっていて、番号を取って待っていたら15分ほどで呼ばれました。

何をしたかというと、奥さんが使っている携帯のSIMカードをeSIMに変更するという手続きです。今は日本用とフィリピン用で携帯が分かれているので、これを一つに合わせたいという話でした。私のほうも以前は2台ありましたが、今は1台に日本とフィリピンのSIMが両方入っている運用です。携帯が2つあると充電も大変で、あまり良いことがありません。仕事用とプライベート用を分けている方もいらっしゃいますが、マグダレナは大企業ではないので、私たちにとっては一つにまとまってスッキリしたかなという感じですね。
ランドマークで毎回見る光景
その後、車でアラバンのランドマークまで移動しました。なぜ徒歩圏内のマカティのランドマークではなくて、アラバンまでわざわざ車で30分かけて行ったのかというと、マカティのランドマークには買いたい鶏ひき肉がないことが多いからです。

アラバンまで行ってみたところ、鶏ひき肉はなかったのですが、3キロ以上買うなら、ひき肉にしてくれるということ。胸肉ともも肉がえらべるので、使いたい料理に適した方にしました。ということは、マカティでもひき肉にしてもらえるのかも?と翌日マカティで聞いてみたのですが、何のことはない、ひき肉マシーンが壊れているとのこと。では、いつ直るのかと聞くと、「わかりません」という、いつものフィリピンらしい答え。
で、そのランドマーク。マカティに行ってもアラバンに行っても、大体遭遇するのは、店内でおしゃべりをずっとしているスタッフのグループですね。3人から4人の群れが、売り場の中のあちこちで3カ所から4カ所、多くて5カ所くらいに分かれて、それぞれでしゃべっている。このグループはまだマシで、一応真ん中をお客さんが通れるように道は開けてくれていました。日本ではなかなかない風景です。

日本のスーパーではまず考えられないし、黙々とよく働く日本人は素晴らしいと思うのですが、そんなに働いているのに、日本人一人あたりの生産性が低いということが言われているのは、悲しい気がします。
日本とフィリピン、生産性の話
日本に帰ると、母が物価高についてどうにかしてほしいといつも言います。確かに日本は物価高です。ただ、収入に対しての生活物価の比率としては、フィリピンのほうがもっと高いと思うんですよね。
日本について言えば、物価をどうにかしてほしいとお上に言う気持ちもわかります。ただ日本の生産性は、先進国の中でずっと低いままです。日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2025」によると、2024年の日本の時間当たり労働生産性は60.1ドル(5,720円)でOECD加盟38カ国中28位。就業者1人当たりでは98,344ドル(935万円)の29位でした。
順位の推移のほうも気になります。2018年に21位だったのが2020年に28位まで落ちて、そこから戻りきらないまま2024年も28位。G7では最下位が続いていて、これはデータの取れる1970年以降ずっとそうです。物価変動を除いた実質の上昇率も-0.6%、38カ国中33位。伸び悩んでいるというより、下がっている。
政治のニュースをみながらいう母の「物価高をどうにかしてほしい」についいては、政治家に丸投げでなくて、とそこを上げていく努力を、国民一人一人もしていく必要があるんじゃないかと思ったりもします。引退している母に言うのもなんですが。小さいながらも会社を経営しているからそういう発想に私はなるのかもしれません。普通に雇われている人だったら、自分の生産性を上げようとはあまり思わないものなんでしょうか。
日本の生産性が低いのは、サービス業に従事する人口が多すぎることが一つの要因らしい。実際、日本の就業者の73.8%がサービス業です。そしてそのサービス業の生産性が、米国の49.6%しかない。世界一安くて美味しい外食産業のトレードオフなのかもですね。産業別に見ると化学は米国の127.6%で勝っているのに、卸売・小売は37.9%、宿泊・飲食サービスは30.2%です。私の商売がまさにその宿泊・飲食なので、耳が痛い数字ではあります。どうしてもなるべく安く価格設定してしまいます(日系宿のアニラオでの価格設定は他と比べてかなり低め)。。。
フィリピンと日本を並べてみる
では、おしゃべり大好きなフィリピンの生産性はどうなのか。同じ基準で並べるとこうなります。
| 項目 | 日本 | フィリピン |
|---|---|---|
| 就業者1人当たり労働生産性(2024年) | 86,866ドル | 23,960ドル |
| 年間労働時間(就業者1人当たり、2023年) | 1,654時間 | 2,096時間 |
| 上の2つから出した時間当たり(概算) | 約52ドル | 約11ドル |
| サービス業で働く人の割合(2024年) | 73.8% | 59.3% |
ドルはいずれも2021年基準の購買力平価換算。生産性と労働時間で年が1年ずれているので、時間当たりはあくまで概算です。
1人当たりで見ると日本の3.6分の1。ただフィリピン人は、日本人より年間440時間ほど長く働いています(調べてびっくり)。1日8時間で割れば55日分です。時間当たりに直すと、差は4.6倍まで開く。日本の4分の1から5分の1という感覚は、おおむね当たっていました。
数字の裏付けもあります。社会保険料を払うフォーマルな雇われ方をしている人は、フィリピンの就業者の3分の1ほど(マグダレナの従業員はここに入っているぞ!)。不完全就業率も11~12%台で推移しています。仕事はあるが足りない、という状態です。人手が安く余っているから、店は人を厚く置く。同じサービス業をとっても、日本人一人で回しているところに3人から4人を割いている。それでは上がらないのは当然で、こうやってずっとしゃべっていてもノープロブレム。
フィリピン人は生産性を上げるという発想が、今のところ日本人以上にない人たちです。日本から見れば、のんびりしていていいなと思えるのかもしれませんが、国を豊かにするという意味ではあまり良くないのかなとも思います。
そもそも政府に対する信頼がない国ですし、下々の者が頑張りましょうという議論自体が必要とされていない。住んでいて感じるのはそこです。それよりは、出稼ぎに行って自分の家族だけに仕送りをする。家族の幅が広いのでそれはそれで大変なのですが、公に頼らず自分たちで何とかするという力は非常に旺盛な国だと思います。
マグダレナススタッフが「働き者」な理由
一方変わって、我が家マグダレナの話をすると、客室17室・ゲスト最大35名の宿とダイビングショップを、スタッフ7人で回しています。内訳はダイブショップと外の掃除関係で3人、キッチン1人、ダイニングと客室と洗濯で3人。
宿の部分だけ取り出すと4人です。伊豆や沖縄で17室・35名の2食付きの宿を回すなら、私の見立てでは常勤換算で6人。朝食と夕食の二つの山を1日8時間の枠に収めるので、パートを含めた実人数なら8人から10人でしょう。調理に2人、配膳に2人、17室の清掃と布団の上げ下げに2人。シーツとタオルは業者に出すので、洗濯係はいりません。
マグダレナでは4人で、洗濯まで自前です。1人が担うのは4.25室、ゲスト8.75名。日本の宿の1人あたり2.8室、5.8名と比べて1.5倍の範囲を持っています。年間労働時間で割り直しても、客室1室あたりの投入は日本の宿の84%で足りている。国の平均が日本の3.6分の1という場所で、うちの現場は逆を向いた数字になりました。
ゲストさんからよく「スタッフがとてもよく働く」と言っていただきます。ありがたい評価ですが、マグダレナのスタッフが特別なフィリピン人というわけではありません。募集して来てくれた、この土地のふつうの人たちです。
一つ違うのは置かれている場所。4人で17室を回す現場には、固まってしゃべっている時間が物理的にない。1人が皿も出すし、部屋も直すし、洗濯機も回す。仕事の幅が広いと手が空かず、自分の判断で動く癖もついてきます。
環境とは別に、こういったフィリピンの常識からは「かなり厳し目」の職場でも働いてくれる(給料は多分アニラオのどのリゾートよりも高いと思います)人の良さ(嫌なスタッフはすぐやめていって、今残っているのはまさに精鋭)、日本に研修で行った経験も作用していると思います。
ランドマークの売り場に3人4人が固まっているのは、人を厚く置ける環境が、しゃべる時間まで作ってしまった結果なんでしょう。あまり責めてはいけません。同じ人たちでも、置かれ方が変われば普通によく働く(多分)。うちの7人を見ていると、そこは自身があります。実際、海外出稼ぎに出たフィリピン人は、出稼ぎ先ではよく働いているようです。
一株2,880円のカリフラワー
物価高の話にもどしましょうか。買い物をしていると、サンティスでカリフラワーが目に入りました。これが丸々一株で、日本円にして大体2,880円です。最低賃金が日本の8分の1ぐらいの収入を得ている人達が住むフィリピンの物価は安いとは言えないですよね。もちろんカリフラワーが野菜としては高めであることと、サンティス自体が日本で言ったら成城石井のような高級スーパーに該当するということはあります。それにしてもです。しかも黒ずんでて美味しくなさそう。。

以前、日本が物価高で大変だとおっしゃっていた問い合わせのお客さんがいらっしゃいました。結局キャンセルになってフィリピンの地をを踏むことはなかったのですが、日本は物価高といっても、フィリピンで日本風な暮らしをしようとするよりも全然安く、かつ良いものが食べられます。2,800円出してもこんなカリフラワーですから。
諦めも、少しは持っておいたほうがいい
日本国内だけに住まわれている方にはなかなかわからないかもしれませんが、まだまだ日本は恵まれています。それが一つ。加えて、日本人には問題を打開していく努力をする知能や連帯があり、それを受け止めてくれるだけの政府もまだある。そう考えると、望みがあるんじゃないかと思います。
フィリピンには、受け皿になるような政府がちゃんとしていないところがあります。日本人的な発想でこういう国にいたら絶望しかない感じがするのですが、フィリピンの人がある意味「幸運」なのは、その辺はすでに諦めているというのか、もともと政府にあまり期待していない。
日本にいるといろんなことに腹を立てることもあるかもしれません。なぜかというと、腹を立てればなんかどうにかなるかもという気がするからです。世の中を良くしていこうという気持ちは大事にしておきたい。ただ、それにばかりとらわれると胃が痛くなったり、気分がキリキリしてしまいます。フィリピンの「まあいいんじゃない」という諦めみたいなものや、家族だけは大事にしようという自分にとってブレない大切な何かを持ってそれを守る発想も、少しは持っておく必要があるんじゃないか。そんなことを考えた1日でした。
参考
– 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2025 (https://www.jpc-net.jp/research/detail/007846.html)」
– 日本生産性本部「産業別労働生産性水準の国際比較2024 (https://www.jpc-net.jp/research/detail/007160.html)」(2020年データ)
– 世界銀行 GDP per person employed (https://data.worldbank.org/indicator/SL.GDP.PCAP.EM.KD)/Employment in services (https://data.worldbank.org/indicator/SL.SRV.EMPL.ZS)
– Our World in Data「Annual working hours per worker (https://ourworldindata.org/grapher/annual-working-hours-per-worker)」、OECD Economic Surveys: Philippines 2026 (https://www.oecd.org/en/publications/oecd-economic-surveys-philippines-2026_f0e0c581-en/full-report/strengthening-formal-employment-and-social-protection_9c646caa.html)、フィリピン統計庁 労働力調査 (https://psa.gov.ph/statistics/labor-force-survey/press-release)
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