ネシトメロソと黄色いドラゴンフルーツからのクロウミウマ

洪水で野菜高騰だった

アニラオの海で見られるクロウミウマは、名前はクロでも、体は黄色が多いかも。

水曜日、マニラデーです。今週はスタッフのマービンたちにマニラへ来てもらう形ではなく、私と奥さんの2人で買い出し担当です。まず向かうのは、パサイ市のいつものカルティマール市場。

アニラオにいると、海の波、西風の強さ、雨の強弱など、リゾートの敷地内から見える範囲で天気をみていますが、そこで気づかないのが、マニラの街中やさらに北の地域での洪水。洪水になっているらしいとは小耳に挟んでいましたが、野菜の供給がストップするほどだとは、今日初めて知りました。

カルティマール市場に並ぶ野菜は、ルソン島北部から運ばれてくるものが中心です。道路の寸断や畑の冠水の影響で、市場の野菜は軒並み高騰し、品薄で棚が寂しい状態でした。近隣で採れるキュウリなどは入荷しているものの、遠方から届く葉物野菜が枯渇または高騰。ほうれん草は1キロ500ペソを超える値段がついていました。

品は悪くてもあるものから選ぼうと買い物を続けていると、野菜を満載したトラックが1台市場に滑り込んできました。それを見た八百屋さんたちは大歓喜。女性も男性もみんなでトラックに駆け寄り、荷台から箱を降ろして店内に並べ始めました。何日ぶりかは不明ですが、供給がなければ販売もできないですものね。

「ネシトメロソ」と「甘いさつぽり」|AI時代に懐かしいあるある誤字

昔のフィリピンや東南アジアでは、お菓子のパッケージなどに不思議な日本語がよく見られました。「シ」と「ツ」が逆だったり、意味の通じないカタカナが並んでいたりしたものです。旅先でそうした珍表示を見つけるのは、東南アジアの愛嬌ある日常として微笑ましく眺めるシーンの一つでした。

最近は翻訳ツールの普及もあって、街で見かける「変な」日本語は大幅に減って寂しさ倍増。ですが、そんな中、カルティマールで久しぶりに昔ながらのかわいらしい誤字に出会いました。メロンに貼られていたのは、「ネシトメロソ」のステッカー。「ネットメロン」と書きたかったはずが、「ツ」が「シ」でかつ大文字、「ン」が「ソ」に化けていました。

さらにラベルをよく見ると、「甘いさつぽり」という文字も並んでいます。「甘くてさっぱり」と言いたかったのだと思いますが、「ぱ」が「ぽ」になり、こちらも小さな「っ」は存在を認められず、「つ」のまま。漢字の「甘」とひらがなでフォントがバラバラな点も含めて、一周回って懐かしく、愛おしさすら覚えるAI時代に復活した誤字との再会でした。

先週の激マズキウイと黄色のドラゴンフルーツ

メロンの愛らしいステッカーには触れずに、カルティマールでいつも寄る果物屋さんの店主と話したのは、先週の激マズキウイについて。パッケージを見る限りゴールデンキウイを思わせる装いだったのに、切ってみると中身も黄色ではなくて緑のままだし、果肉はカチコチ。店のお姉さんに「先週のキウイはかなり厳しかったよ」と伝えると、店側も味の異変に気づいていたみたい。

今売っているのは、ちゃんとおいしいキウイ。

「あれはお客に出せないと分かったから、もうあの業者からの仕入れはやめた」とのこと。先週の1回きりで姿を消した激レアなキウイに当たってしまった形ですが、これもひとつの思い出です。

ところ変わってお次のS&R、果物売り場を歩いていると、黄色い皮のドラゴンフルーツが並んでいました。赤や白のドラゴンフルーツは見慣れていますが、果皮が鮮やかな黄色いタイプを見るのは多分初めて。食べた経験のある人によると、果肉は白く、赤いドラゴンフルーツよりもさらに強い甘みがあるとのこと。値段は赤よりも高価でした。今回は購入を見送りましたが(だって高い)、そのうちに味を確かめてみたいです。

黄色いのにクロウミウマ|学名 Hippocampus kuda の名前に隠された歴史

黄色いドラゴンフルーツを眺めていて思い出したのが、アニラオの海で見られる黄色いタツノオトシゴ、「クロウミウマ」の存在です。

名前に「黒」と入っているのに、アニラオの海で見かける個体は鮮やかな黄色が目立ちます。「黄色いのに黒海馬とはこれいかに」ですが、黒い個体も実際に生息しています。確認してませんが、日本では黒の方が多いのかも?

学名は Hippocampus kuda です。属名の Hippocampus は、ギリシャ語で馬を意味する hippos と、海の怪物を意味する kampos を組み合わせた言葉。ギリシャ神話で海の神ポセイドンが乗る戦車を引く、前半分が馬で後半分が魚の怪物が語源です。

種小名の kuda は、マレー語やインドネシア語で「馬」を意味します。この学名を記載したのは、オランダの魚類学者ピーター・ブリーカー(Pieter Bleeker)さん。アニラオでは激レアのスズメダイ「ブリーカーズダムゼル」の由来にもなった人物ですかね? ギリシャ神話の馬の怪物に東南アジアの馬を重ねた学名で、直訳すると「馬のような海の怪物の馬」という不思議なウマウマしい重ね言葉になっているのがキュートです。

英名では Yellow seahorse(イエローシーホース)と呼ばれます。英語圏では黄色い個体のほうが印象に残ったのでしょう。潔くわかりやすい名前です。

周囲に合わせて色を変える生態と、オスの献身的な育児

クロウミウマは、周囲の環境に合わせて体色を変化させる能力を備えています。

タコやカメレオンのように数秒で色を変えるわけではありません。水族館などの飼育記録によると、数週間ほどの時間をかけて、自分が暮らすサンゴや海草の色合いに合わせて体の色調を調整するんだそう。黒い個体も黄色い個体も別種ではなく、環境や生息場所に応じた姿を見せているだけです。

生態面では、タツノオトシゴの仲間に共通する特徴をしっかり受け継いでいます。オスのお腹には育児嚢と呼ばれる袋があり、メスがそこに卵を産み落とします。卵を受け取ったオスが腹の中で大切に卵を守り、稚魚になるまで育てて出産する、水中のイクメン仕様です。

また、タツノオトシゴの仲間は基本的に一夫一婦制で強い絆を結ぶとされます。とそこで疑問に思ったのが、同じ仲間のピグミーシーホース。あの子達は一夫一婦の素振りを見せないんですよね。謎です。

クロウミウマは、アニラオで見られるタツノオトシゴの中では大型の部類に入ります。体が大きいぶん存在感がありますが、性質は臆病でシャイ。ダイバーが近寄って明るい水中ライトを直撃させると、眩しがって背中を向けてしまいます。

かつて漢方薬などの材料として大量に捕獲された歴史があって、現在は生息数が減少してワシントン条約(CITES)の附属書IIに掲載され、国際取引が規制されているらしい(その割には中華街の薬局においてある)。ダイビング中に見つけたときは、ライトの光を当てすぎず、適度な距離を保ってそっと見守ってあげてくださいね。

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