ウータンナロオブは神話

マニラ活動日。朝から波乱がありまして、昨日まで働いていた最後のキッチンスタッフが、「もう辞めます」と。

できの悪いのを、それでも彼女のスキルが一つでも伸びればと我慢して使ってきたのですが、週末奥さんに怒られたの(だって、10分前に出したばかりの指示ができていない)がトリガーになって、せめて辞めるときは1ヶ月前にはいってねとこれまでミーティングで百ぺん繰り返していたのにも関わらずの、「今日辞めます」。

やる気のない人間にいてもらっても無意味なので、引き止め工作はせず、しばらくキッチン奥さんワンオペ、大沢ができるだけアシストの体制になります。神様は乗り越えられない試練はお与えにならないという話も聞きますけど、弱り目に祟り目ですなぁ。

フィリピンの文化論として、「パキキサマ」と「ウータンナロオブ」の2つが伝統的にあげられます。それぞれ、「仲間意識」と「受けた恩義は返す」なのですが、受けた恩義を返すという美徳を実践しているフィリピン人に出会うのは、ものすごくまれです。

現代に生きる日本人の中から、忍者か侍をさがすのと同じくらいのレア度だと思います(今だって忍者の子孫は実在して流派を継承していますし、侍の心をもった日本人だって、虚無蔵さんのようにいるはず。だからゼロではない)。

受けた恩義どころか、「恩を仇で返す」のが、フィリピンで40年以上生活してきた奥さん父娘が目撃してきた現実です。私的には、恩を仇で返すというより、「恩を恩と思っていない」というフィリピン人の、「やってもらって当然」観念の方が現実に即しているようには思いますけれど、ここでのポイントは、「ウータンナロオブ」な恩返しをフィリピン人には期待しないほうが、自分が傷つかないということです。

それでも、一緒に働く間は、楽しく、かつ、何か一つでも彼らの人生にとってプラスになる経験のある場で、このマグダレナがあったらいいなぁというスタンスに変わりはないです。

という話を、先日注文した器材干場の屋根をピックアップしたあとに立ち寄った、カルティマールのオデンハウスのおじさんと、おでんを突きながら話した遅い午後でした。

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オデンハウスさんでも、やはり商売上、これまで多くのスタッフを雇用してきたけれど、「ウタンナロオブ」には遭遇せず、自分が傷つかないためには、「一線を引いて、仲良くなりすぎない」につきる、とのことでした。

ウータンナロオブの残り香として、カウントしても良いかなと思うのが、割と多くの辞めていったスタッフがFacebookなどSNSでつながりを保ちたがっているところに見て取れるかもしれません。何か恩を積極的に返してくれることは期待しなくても、数年後、別の職場で揉まれて少しは使えるようになったときに、ヘルプを頼むかもしれない一つの細い糸が差し出されている程度には、ウータンナロオブ。

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自宅に帰って、ビールで飲み直し。今日気づいたのですが、よくお世話になる安いTiger Black Strong、家の直下のセブンイレブンだと72ペソなのが、隣のセブンイレブンまでいくと2ペソ安い70ペソ。その一方で、78ペソのTiger Crystalが80ペソと2ペソのギャップはここにもられている不思議さ。

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つれづれなるままの『うしおととら』妖怪ふすまは茶色いイメージでしたが、アニメでは緑色の配色でした。

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