ダルマハゼって、オスになったりメスになったりするんだって

大雨警報でていますね

金曜日のアニラオです。台風14号だった低気圧がフィリピン上空に居座り、加えて非常に強い台風13号が沖縄方面へ進んでいる影響で、厚めの雨雲に台風由来の雨が重なり、かなり強い雨になっています。大雨警報のアラートがひっきりなしに鳴るような状態でした。

それでも風向きを見る限り強風波浪警報(Gale warning)が出る気配はなく、ダイビングは可能と判断してアニラオへ向かいました。移動中もずっと雨。

台風や低気圧が近づくと「今日は無理かな」と反射的に思いがちですが、実際に見ているのは雨の量そのものより風向きと強さ、フィリピンの気象庁PAGASAの出す強風波浪警報の有無です。今回も雨は強かったものの、その基準に照らして、町役場からも出港禁止の命令は出ていない状態です。

スタッフミーティングとケンタッキーの初体験

アニラオへは昼頃到着予定で、到着後すぐにミーティングをしたいという流れになったので、ご飯を用意していってあげようということで、道中ケンタッキーフライドチキンを買っていくことにしました。

今回初めてスマホで注文と支払いを済ませ、あとは受け取りだけでいいというシステムを使ってみました。受け取り時間はぴったりに行きたかったのですが、少し遅刻。日本人としてちょっと恥ずかしい。

てっきり時間通りに梱包まで済んでいるものと思っていたら、実際は行ってから詰める方式でした。チキンが揚がっていないタイミングだと「あと20分お待ちください」となることも珍しくないケンタッキーなので身構えましたが、今回は10分弱の待ちで済みました。

すでに揚がっているチキンを詰めるだけのはずが、マネージャーらしき人がレシートの出し方に手間取っていたようで、結局下の人にもう一度頼んで対応してもらう場面もあり。オンラインで注文できるようになって、多少は便利になったものの、痒いところに手は届かない、というのが正直な感触ですね。

いつもは熱いチキングリラーがありがたい

途中、お気に入りのビリヤニ屋のBulabogに立ち寄り。入り口近くにグリルチキンのグリラーが置いてあって、普段の暑いフィリピンではその熱にさらに炙られるのが定番なのですが、今日は雨で気温が下がっていたので、逆にストーブのようなありがたみ。南国フィリピンでも、温くて気持ち良いことが極稀にあるんです。

アニラオに到着。大丈夫そうかと思う時があるかと思えば、厚い雨雲に覆われてしまってしばらくの豪雨のサイクルをランダムに何度か繰り返す形です。

もっと台風が南ルートだったら、迷わずお休みにするところだったのですが、今回のルートは悩ましいです。これまでのデータで行けば、明日のダイビングは大丈夫そう。でも、がけ崩れで道路が通行止めになるリスクも多くはないけれど、ゼロでもない、そんな感じです。

本日のアニラオの生き物紹介:ダルマハゼ

そんな大雨の中でのアニラオの海の生き物紹介は、ダルマハゼです。

【日本語名】ダルマハゼ

意味・由来:
和名の「ダルマハゼ」は、丸みを帯びたずんぐりとした体形が、縁起物の置物「達磨(だるま)」を連想させることに由来すると考えられています。ハゼ科ダルマハゼ属(Paragobiodon属)の和名は軒並み「〇〇ダルマハゼ」という形式が取られており、本種はその属の基準種(タイプ種)に位置づけられる代表的な種です。

【学名】Paragobiodon echinocephalus (Rüppell, 1830)

語源・意味:
属名 Paragobiodon は、ギリシャ語の「para(~のそばに、~に類似した)」とラテン語の「gobius(ハゼ)」、ギリシャ語の「odous(歯)」を組み合わせた合成語とされています。種小名 echinocephalus は、ギリシャ語の「echinos(ウニ、棘のある)」と「cephalus(頭)」からなり、頭部から後頭部にかけて鱗がなく、代わりに剛毛状の小突起(パピラ)が密生していることに由来する「棘頭の」という意味です。

日本語にすると、トゲ頭ハゼっぽい歯太郎くん、って感じですかね。

【英名】Redhead Goby(レッドヘッド・ゴビー)/ Redhead Coral Goby / Warty-headed Goby

意味・由来:
「Redhead」は赤みを帯びたオレンジ色の頭部に、「Coral Goby」は造礁サンゴ(特にミドリイシ属やハナヤサイサンゴ属)の枝間に棲むという生態にちなみます。「Warty-headed」は種小名 echinocephalus と同じく、頭部の剛毛状突起が疣(いぼ)状に見えることに由来する表現です。

水をかぶれば女に、お湯をかぶれは男に?

このハゼが面白いのは、オス→メス、メス→オスの性転換が起こることです。多くの魚類がどちらか一方通行なのに比べると、かなり変幻自在な性のをもっています。

「一夫一婦」だからこそ起きる、切実な性転換

多くの性転換魚(ホンソメワケベラやクマノミなど)は、複数の異性がいる群れの中で「一番大きい個体が性転換する」というシンプルなルールで動きます。しかしダルマハゼは1つのサンゴ群体にオスとメスのペア1組だけで暮らす、完全な一夫一婦制(社会的単婚)です。相手が1匹しかいないので、もし片方が死んでしまうと、残された個体は途方に暮れることになります。

近くのサンゴに移って新しいパートナーを探す、という選択肢もあるのですが、名古屋女子大の桑村哲生博士らの一連の研究(1993~1994年、Ethology誌・Behavioral Ecology誌)によれば、ダルマハゼが実際に選ぶのは驚くべき方法でした。自分自身の性別を変えて、生き残った同種の隣人(サンゴ内に稀に居合わせる未成魚など)とペアを再構築する、という戦略です。

ポイントは「大きい方がオスになる」というシンプルな法則

ここが本種のユニークなところで、性転換の方向は「もともとオスだったかメスだったか」には一切関係ありません。決め手はただひとつ、ペア内での体の大きさの順位です。

  • 大きい個体=オス
  • 小さい個体=メス

この関係が常に保たれるようになっていて、たとえばメスが死んで、残ったオスより体の大きな未成魚がペア相手になった場合、なんとオスだった個体がメスに逆戻りします。逆に、オスを失ったメスの相方が自分より小さければ、メスが今度はオスへと転換します。つまり「性別」そのものより「そのペアの中での立場(サイズ序列)」の方が優先される、非常に合理的な仕組みなのです。

桑村らはさらに実験水槽で、同性同士(オス同士・メス同士)を人為的にペアにする操作も行い、どちらの組み合わせでも問題なく性転換が起きることを確認しました。片方向にしか性転換できない魚がほとんどの中、こうして双方向に、しかも生涯で複数回性転換できることを実証した数少ない例のひとつがダルマハゼです(同様の現象は近縁のミジンベニハゼ属 Trimma などでも報告されています)。

なぜそこまでして性転換するのか

答えは単純で、「引っ越しのリスク」が高すぎるからだと考えられています。サンゴの外に出れば天敵に襲われる危険が急上昇し、運良く別のサンゴにたどり着けても、そこに空き部屋(=適したパートナー)があるとは限りません。それなら、今いる安全なサンゴの中で、たまたま居合わせた同種の個体と性別を融通し合ってペアを再構築する方が、生存戦略として圧倒的に効率が良いというわけです。「動かない」という選択のために「性別を変える」というのは、なんとも贅沢な進化の解決策と言えるかもしれません。

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