ゲストの皆さんから、予約のときに多くいただく質問がこれです。
「その時期の水温は何度くらいですか? スーツは何ミリを持っていけばいいですか?」
これまでは「だいたい27〜30℃くらいですよ。3ミリで大丈夫です。一番冷たくなるのが1月下旬から2月でその時は25度くらい。5ミリか、3ミリならフードベストも」とお答えしてきました。20年潜ってきた体感をそのまま口にしていたわけですが、根拠になる数字を出せていたわけではありません。
先日、腕のダイブコンピュータに溜まっていたデータをパソコンに落とす仕組みを作りました([前回の記事](#)で睡眠の話に使ったのと同じデータです)。そこには、2022年7月から先週までに潜った**775本ぶんの水温**が1本残らず記録されていました。
全部集計してみたら、より正確なデータが得られました。
まず、結論の月別推移水温グラフ
| 月 | 平均水温 | 実際に記録した幅 | 本数 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 26.4℃ | 24.5 〜 27.5℃ | 88本 |
| 2月 | 25.8℃ | 25.0 〜 26.5℃ | 62本 |
| 3月 | 26.1℃ | 24.5 〜 27.5℃ | 60本 |
| 4月 | 27.5℃ | 26.5 〜 30.5℃ | 65本 |
| 5月 | 29.4℃ | 27.5 〜 31.0℃ | 78本 |
| 6月 | 29.6℃ | 28.5 〜 30.5℃ | 60本 |
| 7月 | 29.2℃ | 28.0 〜 30.5℃ | 84本 |
| 8月 | 29.2℃ | 28.0 〜 30.5℃ | 106本 |
| 9月 | 28.7℃ | 27.5 〜 29.5℃ | 55本 |
| 10月 | 28.6℃ | 27.5 〜 30.0℃ | 48本 |
| 11月 | 28.3℃ | 27.5 〜 29.5℃ | 27本 |
| 12月 | 27.2℃ | 26.5 〜 28.5℃ | 42本 |
いちばん冷たいのが2月で平均25.8℃。いちばん温かいのが6月で29.6℃。一年を通しての差は3.8℃です。9月が一番高いと思っていたのですが、確かに水温は高めですが、最高ではなかったですね。いずれにしろ「高水温域」であることに代わりはないですが。
「27〜30℃」と言ってきましたが、冬場はさらに2℃ほど低い。1〜3月は26℃前後です。全体でも27℃を下回った本数が27%ありました。平均を取るとこれですが、瞬間的に24度代に1月から3月(上旬)はなることを覚悟しておいたほうが良いです。(なお、この数字にはある補正をかけています。そのぶんの理由は後半に書きました。)
平均だけ見ると、たまに外します
グラフの薄い帯は、その月に実際に記録した水温の幅です。ここを見てほしいんです。
たとえば2月。平均は25.8℃ですが、いちばん低い記録は25.0℃でした。2026年2月20日のナイトダイブ、水深18.7m、72分。長時間であったこともあって、けっこう寒かったです。775本を通していちばん冷たかったのは24.5℃で、2023年3月と2024年1月に何本かあります。逆に5月には31℃を記録した日もありました。
同じ月でも、風向きと潮まわりで水温は動きます。「2月は25.8℃」という平均だけを見て準備すると、当たりの日はいいけれど外れの日にがっかりすることになる。幅のほうを見て、寒いほうに合わせて準備するのがオススメです。
深いところは、やっぱり冷たい
1本のダイビングの中でも水温は動きます。ダイブコンピュータはその1本の最低水温と最高水温も記録しているので、深さ別に見てみました。
| その1本の最大深度 | 本数 | 1本の中の温度差 | いちばん冷たい瞬間の平均 |
|---|---|---|---|
| 10m より浅い | 479本 | 0.7℃ | 28.1℃ |
| 10 〜 20m | 209本 | 1.9℃ | 27.4℃ |
| 20m より深い | 87本 | 2.1℃ | 27.6℃ |
浅場でマクロを撮っているぶんには、1本の中で0.7℃しか動きません。ところが20mまで落とすと、同じ1本の中で2℃前後の差が出ます。いちばん冷たい瞬間の平均は27.4〜28.1℃でした。
数字だけ見れば「2℃くらい」ですが、体感はけっこう違います。しかもアニラオのダイビングは、ほとんど動かずにじっと被写体を待つスタイルです。実際、ダイビング中の平均心拍を調べたら81でした。私の安静時が50なので、上がってはいるものの、運動と呼べるほどではない。動かない=発熱しないわけで、水温の数字以上に冷えます。
「アニラオは暖かいから薄手で平気」と聞いて2ミリで来られた方が、3本目で震えているのを何度か見てきました。理由はこの「動かなさ」です。
スーツは何ミリか(私の目安)
データと20年の体感を合わせると、こうなります。
| 時期 | 平均水温 | 私の目安 |
|---|---|---|
| 5〜8月 | 29.3℃ | 3mm フルスーツ |
| 9〜11月 | 28.6℃ | 3mm フルスーツ。3本目にフードベストがあると楽です |
| 4月・12月 | 27.4℃ | 3mm+フードベスト |
| 1〜3月 | 26.1℃ | 5mm、または3mm+フードベスト。いちばん冷える時期です |
これまで「一年中3ミリで大丈夫」と言ってきましたが、**1〜3月は5ミリを勧めるべきでした**。私はミートテック装備なので、3ミリにフードベストで大丈夫ですが、一般的には5ミリ。ちょっと寒がりな方はさらにフードベストまで足すのがベターです。26℃の海で、動かずに3本潜る。しかもアニラオに来られる方は1日3本、4本と潜ります。3日目あたりで寒さが身にしみてきます。
寒がりの方はここから一段厚いほうに寄せてください。あと、どの季節でもフードベストを1枚持っているかどうかで3本目の快適さが変わります。かさばらないので、迷ったら入れておくのをおすすめします。
温暖化で、水温は上がっているのか
ここが個人的にいちばん気になっていたところです。潜るたびに「今年は暖かい気がする」「今年は冷たい」と口にしてきましたが、それが本当なのかどうか。
年ごとの平均を並べて重ねてみました。
線がほとんど重なっています。4年間で、はっきりした上昇は見えません。
同じ月どうしで比べて「その月の平年からのズレ」を計算すると、2023年が−0.32℃、2024年が+0.11℃、2025年と2026年が+0.15℃。2023年がやや低い以外、差らしい差がありません。
もっとも、それは当たり前の話でもあります。海水温の傾向を語るのに4年は短すぎる。ここで言えるのは「この4年でアニラオの海が目に見えて暖かくなった、ということはなかった」までで、その先は言えません。
数字を出すまでに、一悶着ありました
最初に集計したとき、出てきた月別平均は今より1℃以上高い数字でした。2月で27.2℃。「そんなに暖かくないぞ」と思ったんです。
理由はすぐに思い当たりました。2025年4月11日まで使っていたダイブコンピュータ(Descent G1)は、水温を1.5〜2℃ほど高く表示する個体だったんです。使っていた当時から分かっていたことでした。ただ、頭では分かっていても、記録のほうはその高い数字のまま4年ぶん溜まっていたわけです。
775本のうち575本がその時計での記録でした。つまりデータの4分の3が高めに出ていた。そこで、G1で記録したぶんから1.5℃を引いた上で集計し直したのが、この記事の数字です。
引き算が正しいかどうかも確かめました。買い替え前後で、同じ月に新旧それぞれで潜った記録があります。そこを月ごとに突き合わせると、1.5℃を引いた古い記録と新しい記録は**平均0.4℃の差の中に収まりました**。同じ日に両方の時計を着けて潜った日も2日あって、そこでも1.0℃と1.8℃の差。だいたい合っています。
データを取り始めると、つい数字のほうを信じたくなります。でも、その数字を出している機械のほうが狂っていることがある。体感が「おかしい」と言っているときは、たいてい体感のほうが正しい。 今回いちばんの収穫は、水温の数字そのものより、こちらだったかもしれません。
まとめ
「何月に行けばいいですか」と聞かれたら、水温だけで言えばどの月でも潜れます、というのが今回の答えです。ただし冬に来られるなら、一枚多めに持ってきてください。
滞在中の水温は、毎日ブリーフィングでお伝えしています。気になる時期があれば、遠慮なくお問い合わせください。
コメント